2009年8月
これでは、何時まで待っても埒が明かない。はるばるやってきたのに残念だが、漂流の雰囲気は分かったので、切符売り場に戻ってキャンセルすることにした。
売り場のカウンターには、旅行客らしい男女が立っている。彼らも私と同じ境遇らしい。売り子は、このお客と3人で、次のゴムボートが着たら、必ず乗れるようにしますからといって、お金を返そうとしない。
結局、売り子の計らいで、ゴムボートとライフジャケットが確保され、3人で何とか船出できた。
秋浦河は清流だが、深い川底の小石まで透き通って見えるような、あの透明さはない。
しかし、1300年も前の秋浦の流れは、もっと澄んでいたのだろう。 あるいは、まったく別の場所だったのかもしれない。
それにしても、川面を鏡に譬え、そこに映った自らの白髭を三千丈と詠んだ着想は、やはり非凡としか言いようがない。

漂流は、ゆっくりした河の流れにまかせて、静かに続く。先ほどまでの喧騒が、嘘のようだ。
ときたま瀬があって、オールで軌道を修正する以外は流れ任せ。
出発前に読みなおした秋浦河の連作詩や、李白の数奇な人生に思いを馳せているうちに、2時間ものときが流れ、西日の照りつける船着場に上陸した。
ここから第二の目的地、九華山に向かうには、県道をさらに先に進んで石合県の県城に行けば、タクシーをつかまえることができるだろう。船着場の辺りには、さっき乗った三輪白タクはおろか、車らしきものは何もない。傍にいた男性に、 「石合県行きのバスはここで待っていればいいんですか?」と問うた。
高すぎると思った。結局船着場で半時間ほど待って路線バスに乗り、石合県の県城に着いた。かなり大きな街だったが、予想に反してまったくタクシーがいない。しばらく歩くと三輪白タクがいたので、九華山まで幾らか問うと300元という。しかも三輪トラックである。さっきの船着場で、OKしておけばよかったのに・・・それこそ後の祭りである。
大きな通りを歩いてゆくと、警察官の立つ交差点の横に、白タクが沢山停まっている。値段を聞くと、誰もが350元だという。先にも交差点があるのでそちらも当たってみようと思い、背を向けて歩き出したら、ひとりの運転手が追っかけてきて、300元でどうかという。
結局、彼のミニバンに乗って九華山に向かった。途中は道路の整備中で、でこぼこ道が多く、さんざん揺られながら九華山のホテルに着いたときは、すっかり日が暮れて8時を回っていた。2時間ほど走ったことになる。これなら300元はかかるだろう。結局この日は、秋浦河漂流のために、まる1日を費やしてしまった。
(続く)
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