2010年1月
いよいよ最後の目的地、個城湖である。タクシーで高淳老街に戻り、例の不思議な格好をした塔のある橋を渡った。この塔の前には、青色の三輪タクシーがたくさん止まっている。これに乗って、個城湖の見える所まで行こうという魂胆だ。
ちょうど湖がもっとも広がっている湖岸に、迎湖桃源(げいことうげん)という場所があるので、ここまで行って湖を見たら戻ってくる。さっそく、お決まりの価格交渉が始まる。集まってきた運転手のなかで、一番安い価格を提示した中年女性の車に乗ることにした。
三輪タクシーは昨日散歩をしたのと同じ個城湖の入江沿いの土手を走り出したが、途中から南下して広々とした畑の中に入って行く。
道の周囲は見渡す限り畑だが、上海ガニの養殖が終わったためなのか、ほとんど水が抜かれていた。
車の通る道の両側には、まっすぐ伸びた背の高い木が行儀良く立ち並び、退屈な茶色の空間を引き締めている。
半時間ほど三輪タクシーに揺られて、ようやく迎湖桃源の門に着いた。門をくぐってしばらく歩くと、何やら大げさなつり橋が湖の堤防まで続いている。これを渡って、湖まで行きなさいということらしい。
つり橋を渡って、小高い土手の上に登ると、真っ青な湖が視界一面に広がった。ここでも、上海ガニの網かごを片付けている人々がいたが、まるで海そのものだ。どれだけ目を凝らしても、対岸は見えない。しばしの間、青い無限の広がりのなかに立ちつくした。
大詩人李白は、「游高淳丹陽湖詩《高淳の丹陽湖に遊ぶ詩》」を残している。
かつて高淳県や隣接する安徽省の一帯は、丹陽湖と呼ばれる巨大な沼沢地だったが、その後、土砂の堆積や埋め立てなどで、現在の石臼湖や個城湖など幾つかの湖に分かれたのだという。
李白のいう高淳の丹陽湖がどの辺りだったのか、推し量る術もないが、この軽妙な詩をご紹介して、筆を置きたいと思う。
(注)
元気:生命力、活力 浩:盛んである 天外:高くて遠いところ 賈客:商人 起:生じる
蘆花:アシの花 賈客:商人 起:生じる 遂:追う、追いかける
(終わり)
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