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(秦末の英雄を訪ねて-2/6)

       

鎮淮楼という立派な楼閣の手前でタクシーを降りると、広場に朱塗りの回廊がしつらえてあって、多くの市民が集い、愉しそうに時間を過ごしている。

そこで身なりのよさそうな人を見つけ、股下街がどこにあるか聞いてみると、あっちだと指さす。

地図を広げて、あっちというその場所を確認すると、歩いてゆける距離である。

      鎮淮楼
 

股下橋

鎮淮楼から南に向かい、屋根にうだつのある建物の角を曲がって小さな通りに入ると、股下橋と書かれた大きな門が見えてきた。門の先には、さらに小さな路地が連なっている。

さっそく股下橋と書かれた門をくぐり、狭い路地の先に歩を進めた。古い民家が立ち並び、生活臭いっぱいの小路を歩きながら、韓信の股くぐりの情景を思い浮かべた。

何の変哲もない小さな空間だったが、こんなところに2200年の昔を偲ぶ楚州区の人びとの、思い入れのようなものを感じた。
           

史記に、次のような記述がある(世界の名著「司馬遷」、中央公論社より引用)。

韓信は淮陰の城市のほとりで釣りをしていた。ばあさん連が絹わたをたたいて水でさらしている。ひとりのばあさんは韓信が腹をすかした様子なのを見て、韓信に飯を食わせてやった。さらしおわるまで数十日のあいだ、それがつづいた。喜んだ韓信は、そのばあさんにいった。
「おれはきっと十分なお礼をお返しするよ」
ばあさんは腹をたててこたえた。
「れっきとした男のくせに、自分で飯も食えんお人じゃ。わたしゃ、にいさんがみておれないから食を進ぜたまでよ。お返しなんぞ望むもんですか」

この故事にちなんだ韓侯釣台と漂母祠(絹わたをさらしていたおばあさんを記念した祠)が次の目的地である。地図を見てみると、肖湖という細長い湖沿いに、韓侯釣台と漂母祠がかなり離れて表示されている。

さっそく近くにいた電動自転車の後ろに座席のついた車(簡易タクシーとでもいうべきだろうか)に手をあげた。運転手はかなりの老人だったが、漂母祠が分からないらしく、近くの人に聞いている。しばらくして出発進行、綺麗な川と緑深い木立に囲まれた場所にやって来ると、老いた運転手は下に広がる湖の方を指差し、韓信の釣台だという。

           
韓信釣台 韓信釣台
           

老人にそこでしばらく待ってくれるようにいい、階段を下りてゆくと右手前方に大きな石碑が立っている。韓侯釣台と書かれた碑の先には石橋があって、緑に囲まれた湖が静かに広がっている。

石橋を渡って先に行こうとすると、後ろから「入場料が要りますよ」と声がかかった。入場料を払って、しばらく湖畔を歩いてみる。湖岸の柳の下では何人かが釣り糸を垂れていて、何となくのんびりした気分になった。

(続く)

             
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