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中国紀行|南昌・廬山・九江

(陶淵明の墓と九江の潯陽楼-1/5)

    2005年4-5月
 
廬山如琴湖    

5月の連休前に、南京に着いた。1年ぶりである。今回は、南京から江西省に南下して、陶淵明ゆかりの廬山(ルーシャン)周辺を見て回るのが最大の目的だったが、その足で水滸伝の重要な舞台、尋陽楼(シュィンヤンロウ)がある九江(ジウジャン)市や、陶磁器の街、景徳鎮(ジンダーツェン)も訪ねてみようと思っていた。

ただし、5月の1日から7日まではメイデーの連休で、日本のゴールデンウィークとちょうど重なっている。

                       

南京に駐在していたころと同じ気分で、江西省に向かう直前に飛行機の切符を買うべく、ホテル内にある旅行会社に出向いた。確か4月の28日だったと思う。
「明日かあさっての南昌行きの切符をください」
「全部満席です」
「それでは5月1日は?」
「ありません。一番早いのは、5月2日の午後便になります」
まったく予期しない答えに呆然としてしまったが、ようやく思い直して、
「それでは汽車の切符は?」と尋ねると、
「今ごろ汽車の切符なんて、どこ行きもありませんよ!もっと早く買いに来ないと・・・バスならまだあるかも知れません」
何ともつれない返事だった。

                       

江西省の省都南昌(ナンチャン)市は、とりわけ有名な観光地というわけではない。それでさえ、飛行機の切符が売リ切れてしまうのだから、中国の人びとの可処分所得がアップして、連休期間中に長期旅行を楽しむ生活パターンが急増しているということなのかも知れない。3日も旅程を引き伸ばす余裕は無かったので、やむなく旅行会社に教えてもらったバスターミナルに赴き、翌日夜発の切符を購入した。

  南昌水観音亭
                       

所要時間は11時間ほどで、翌朝9時ごろ南昌に着くのだという。

南京に来る前に、悪友猪倉さんに連絡を入れていたのだが、たまたま夜行バスの切符を買ったその日の午後、彼と喫茶店で会うことになった。彼は知人ふたりを連れてきていて、私に紹介してくれた。早速この日の出来事を話すと、本当に夜行バスに乗る気でいるのか?というのが、彼ら全員の最初の反応だった。

「夜行バスは一番危ない」、「サービスエリアの暗いところに止められて、物取りが乗り込んでくるから、渡しても良いくらいの金をポケットに入れておくほうがいい」など、皆にさんざん脅かされてしまった。

ホテルに戻っても、何となく昼間の話しが気になっていたが、たまたま備え付けのローンドリーバッグは布製で、上に紐が付いていて閉じられるようになっている。そこでさっそく紐の付いたところから少し下の部分を切り取り、端を裁縫キットの針と糸で縫い合わせて、ちょうど巾着袋のようなものに仕立てあげた。ここにパスポートと現金を入れて、おなかの部分にしまい込めば、非常のときに備えられるのではないかという浅知恵である。

                       
                       

翌日の夜、バスターミナルで夜行バスの出発を待った。場内アナウンスがあって、いよいよ南昌行きの背の高いバスに向かう。乗客の殆んどは学生風情の若者で、旅行というより帰省なのかも知れない。何となくホッとした気持ちになって、バスに乗り込もうとすると、係員に制止され、手荷物は全てバスの側面にある収納庫に入れるよう指示された。勿論、おなかには、例のにわか作りの巾着袋が入っている。バスは夜行専用で、普通の座席はなく、2段ベッドが縦3列に並んでいて、私の指定席は1階の窓側、真ん中辺りだった。

狭いベッドに横になりながら、昨日の友人たちの忠告を思い浮かべた。手荷物が全て収納庫に入れられるのであれば、それらは車内にいる私よりも安全ではないのか?こんなにきちんとしたバスが、それも殆んど若者が乗っているバスが、夜中のサービスエリアで盗賊に遭うなどあり得るのだろうか・・・妄想は止まることがなかったが、バスは動き出し、高速道路をひた走りに走る。眠ろうとするのだが、タイヤが路面と接触する振動と、余計な妄想で半眠状態のまま漆黒の空は白み、とうとう何事もなく南昌に到着した。

                       
(続く)      
     
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